
現在日本は高齢化社会となっています。
今後も高齢化は進み、死に場所を失う人も多いと言われています。
死に場所を失うとは…病院もベッド数が減らされています。施設へ入所するためにも多額の費用が必要です。
そのため、自宅で療養するしかなくなります。
高齢でも独居生活をしている人もいます。
独居ではなく介護する人が居ても、介護する人も高齢であることが多い現状です。いわゆる、老老介護です。
その状況の中、病院の看護師は入院してきた患者さんに対して入院時から退院を見据えた関わりを持つ必要があります。
退院支援は簡単そうに思えますが、患者さん本人や周りの環境を理解・把握していないと思うようには進めることができないので難しいと言われています。
そこで現在、一般病棟で看護師として勤務している私が退院支援の流れや方法をお話ししていきます。
入院から退院までの流れ

退院支援は入院時からスタートします。
退院支援は看護師のみで介入することは困難であるため、他職種との連携が重要です。
多職種とは
- 医師
- MSW
- リハビリ担当者
- 栄養士
- 薬剤師
看護師は入院時に患者さんの家族やケアマネジャー、施設職員より情報収集をします。
そこで、今後の方向性を確認します。
本人の意思を尊重しつつ、介護している家族の要望を聴取します。
入院時は患者さんは体調が悪いため、退院後の生活がどうなるかは判断するのは困難な状態でありますが、色んな状況を想定しつつ情報を聴取します。
その後、入院して1週間以内に他職種同士でカンファレンスを行います。これが入院時カンファレンスと言われているものです。
入院時カンファレンスの内容をもとに、退院支援は進められます。
退院支援は、今後の方向性が自宅なのか施設へ入所するのかで支援内容は異なっていきます。
この時点で方向性も大体決まっているので、その目標に向かって他職種が援助してくことになります。
以降は中間カンファレンスや院内カンファレンス、退院時カンファレンスなどの流れになります。
中間カンファレンスでは、他職種間で中間報告の場になります。
入院時に決めた方向性で違いはないかの確認をします。
退院に向けて他に必要な検討事項がないかの確認も必要です。
退院カンファレンスでは、退院へ向けての細かい調整を行います。
カンファレンスの際には患者さん本人や家族、ケアマネジャー、施設職員にも同席してしていただく必要があります。
退院支援は1人の患者さんが安楽に過ごせる環境を整え、自分らしく生活できるように考え援助していくことが大切です。
患者さんのアセスメント
✅どんな病状で自宅へ帰るのか。
✅自宅では独居なのか、同居の家族がいるか。
✅退院後も必要な医療行為や看護処置はあるか。
✅内服・経管栄養・インスリン・血糖測定・在宅酸素、喀痰吸引、体位変換、オムツ交換、カテーテル管理、飲水制限、体重管理など。
✅サービス(訪問診療、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーション、訪問入浴、配食サービス、デイサービス、レンタル品など)の導入は必要か。
✅退院後はどの 病院へ通院するのか、かかりつけ医の確認。
医療行為別の指導と介入ポイント

⭐️内服管理
- 内服方法の確認をする。
- 入院前の内服管理状況を元に本人と相談する必要がある。
- 処方された袋から取り出すことができるか。
- 薬袋を切って開けることができるか。
- ハサミを使用することができるか。
- カレンダーを使用するか、分別のケースを使用するかなど管理方法を検討する。
- 1人で管理が困難と看護師が判断した場合は、家族の協力が得られるか確認する。
- 家族も管理が困難な場合、訪問看護や訪問介護などサービスの導入の検討をする。
⭐食事管理
- 入院中に治療食だったか。
疾患によって塩分や食事のカロリーを制限する必要がある場合は医師から自宅で注意する点を確認する必要がある。
栄養士による栄養指導を本人や家族へ行う。 - 食事形態で、常食か柔らかい物か一口大にカットした方がいいのかを把握し、自宅で調理が可能かを確認する。
- 水分でむせるなどでとろみ剤を使用している場合は、どの程度のとろみが必要かを説明する。
⭐️経管栄養
- 経管栄養は自己で行うケースもあるが、ほとんどは家族が行うことが多いため家族への指導が必要となってくる。
- 入院中に家族へ来院してもらい、看護師がスケージュールを立てて指導を進めていく。
- 指導内容の手順が書かれたパンフレットを作成し、パンフレットに基づいて指導するとスムーズであり、家族も理解しやすい。
- 指導のスケージュールは事前に作成し、家族と日にちや時間を調整する。
- 手順はチェックリストを作成して、どの部分が困難であり、どこまで指導が済んでいるかを把握できると、看護師間で統一したスムーズな指導が行える。
《退院までに準備するもの》→経鼻栄養の場合はステートの購入
《必要な物品》チューブ、シリンジ、固定テープ

⭐️インスリン
- 自己注射の指導が必要であり、入院中に本人や家族へパンフレットを使用して実施する。
- 指導の他に低血糖症状や食事ができなかった場合などの対処方法も含めて指導する必要がある。
《必要な物品》針、アルコール綿、針捨て容器
⭐️血糖測定
- インスリンと同様に入院中に本人や家族へパンフレットを使用して指導する。
- 測定値は正常値から低血糖・高血糖の範囲を指導。
- 低血糖時や高血糖時に出現する症状や対処法を説明。
- 血液が付着したアルコール面などは、一般ゴミに捨てないように廃棄方法も説明。
《必要な物品》血糖測定器、針、チップ、アルコール綿、針捨て容器
⭐️在宅酸素
- 酸素の取り扱いや酸素流量値は、入院中に本人や家族へ説明する。
- 在宅酸素の手配は、入院中に酸素会社へ連絡し、主治医から指示書の記入が必要。
⭐️喀痰吸引
- 吸引は自己で行うケースは少ないため、介護する家族へ指導することがほとんどです。
- 手順や注意点はパンフレットを使用して指導を行う。
- 在宅用の吸引器はレンタルや購入で準備することができます。
- 家族へは入院中に在宅で使用する吸引器を使用して指導すると、退院後も混乱せずにスムーズに行えます。
《必要な物品》チューブ、アルコール綿、手袋

⭐️カテーテル管理
- 膀胱留置カテーテルでは、尿の破棄方法の指導を入院中に行う。
- カテーテルの交換は、訪問看護で行うのか病院に受診して交換するのかを確認。
- 自宅でカテーテルが抜けてしまった場合の対処方法を説明する必要がある。
《必要な物品》予備のカテーテル
⭐️体位変換・オムツ交換
- どちらも介助が必要な状態であるため、家族への指導が必要。
- 入院中に家族へ来院してもらい、看護師と一緒に行う。
- 自宅では1人で介助するため、1人で行える介助方法を指導すると家族への負担が軽減します。
⭐️飲水制限・体重管理
- 入院中に主治医より、水分量とベスト体重を確認。
- 指示通りに自宅で管理できるように指導していく。
- 自宅で体重測定が困難な場合は、デイサービスなどを導入するか確認し、測定可能か確認する必要がある。
また、飲水量が少ない、飲水料が多いとどういう症状が出現するかの説明が必要。
まとめ
退院支援は1人では行うものではないため、看護師間で統一してスムーズに支援していくことと一人の患者さんを取り巻く多職種との連携を図り援助していくことも必要です。
看護師は普段仕事で行っているため当たり前の行為かもしれませんが、本人や家族は医療従事者でない限り理解するのに時間を要します。
看護師が一方的に指導するのではなく、本人や家族の反応を見ながら指導していくことも重要です。
そのため、本人や家族を切り離さず、チームの仲間として退院へ向けて進めていきましょう。